日本人が大嫌いだ
2010年 08月 14日
荷物満載の私たちとは違い、軽快に走る。
老王と何やら話すこと数分。
「彼が私たちにランチをごちそうしてくれるそうだ」
なんと青年に武威でランチに招待してもらった。
彼のお母さんも駆けつけ、高そうなレストランにて昼食会。
食べきれないほどの料理をごちそうになる。
彼の名は ハン くん。
がたいがいいので大人に見えるけれどなんと18歳!
めちゃめちゃめちゃめちゃ珍しく、英語が堪能。
しかも英国や米国の若者が使うようなFuckやshitなんて言っている。
あぁ珍しい、と思いながらもサラッと聞き流す。笑
どういう話の流れからか、今夜はこの町に泊まることになった。
しかもホテルまでハン君が用意してくれるのだという。
老王&小王は、あ~あ先に進みたいのに…という感じだったが、
私はこんな思わぬ有難いおもてなしにちょっと驚きながらも楽しみ感謝した。
ランチの後、ハン君とお母さんに町を案内してもらった。
お茶休憩。いろいろ具入り。
「若い二人はどうぞどうぞ」
と促されたのかどうなのかは謎だが、ハン君と二人で公園を散歩する。
「ハン君は学生?」
「僕は軍人なんだ。海軍だよ」
あぁそうか、中国にも徴兵制度があるのか。
(実際は志願者のみ)
「人を殺したことだってあるんだ、だから僕はなんだってできるんだよ」
思わず絶句した。
「へぇ」
そして平静を装いリアクション。
まだハン君は話続ける。
「なんて言ったらいいかわからないけど、僕は日本人が大嫌いなんだ。mioを除いてね」
「なんて言ったらいいかな。でも本当なんだ、でもmioは別だよ」
人を殺したことがある
だからなんだってできる
日本人が嫌い
なんでそんなこと私に言うんだろう。
彼はまだ若いから?言いたかった?
私になんて言ってほしいんだろう。
ものすごい早さでハン君の言葉と疑問が頭を巡った。
それからハン君は、自分の仲間がアフガンやイラクへ派兵されたということ、そしてそこで仲間が亡くなったということ、軍での生活について話してくれた。
でも私はほとんど生返事で、さっきのハン君の言葉を考えていた。
出会ったときはなんとも思わなかったのに、今になって、ハン君の自信溢れる話し方に違和感を感じ始めた。
どういう環境にいてどんな状況だったのかは知らないが(って今話しているけど頭に入らない)ハン君は人を殺した。
そして今それを得意気に私に教えてくれた。
すごくもないし偉くもない。
ひょっとしたらハン君だって苦しんでいるのかもしれない。
それを隠しているのかもしれない。
私にはわからなかった。
無 を感じた。
ただ、胸が締め付けられた。
そして、その次の言葉。
「日本人が大嫌い」
これは私が中国で一番恐れていた言葉だった。
多くの日本人が中国人をよく思っていないのと同じで、中国人だってそうだ。
表面的には、日中友好、同じアジア人同士、といいつつ。
ここまでの2週間旅をしてきて、日本人だ、というのはいつもドキドキした。
老王は私が日本人だということをすぐには言わない。
場合によっては言わないほうがいいこともあるのかもしれない。
「日本人か!」
「よく来たな!」
しかし、私の心配もよそに、歓迎してもらえることのほうが多かった。
そのたびにとても嬉しく思った。
でも、日本人のことをよく思わない人はいる。
それは私が西安についたとき、老王も言っていた。
けれど、さらに老王は続けた。
「政治が戦争をしたんだ」
「人は誰も望んでいないよ」
日本人も中国人も同じ人と人。
本当は人と人として付き合えるはず。
ハン君が「mioをのぞいて」と言ったように。
一人一人の人として向き合えば、どこの国のどんな人とだって。
日本と中国、互いの関係にはある歴史。
決して忘れてはならない。
でも、私たち若い世代はこれからの関係を築かなくてはならない。
今を生きているこの地球でできること。
人と人として向き合うこと。
一緒に今を歩いて(自転車をこいで?)いくこと。