しかし、私は何か違和感を感じていた。
なんかおかしい。
峠を越え、中部のダナンに来たときに気づいた。
服装だ。
ベトナムの人たちは家の外でも中でもコートを着ている。
そればかりか帽子、マフラー、手袋もつけたまま。
モコモコの着膨れのフル装備。
完全防寒だ。
日本では室内ではコートは脱ぐ。
「部屋の中ではコートを脱ぎなさい」と親に教えられ、
「職員室に入るときにはコートを脱げ!」高校のとき体育の先生に叱られ、
社会に出てからも会社や事務所に入る前にはコートを脱ぐのがマナーだと上司に教えてもらった。
しかし、北部ベトナムでは絶対誰も脱がなかった。
もちろん私もそうしていた。
脱げないのだ。
というのも、室内が寒い。
現在冬にあたる北部では日中でも10度程度。
一日中曇って霧雨が降っている、太陽がでないのでよけいに寒く感じる。
にもかかわらず、普通の家庭には暖房はない。
別に火も焚かない。
さらに戸は開けっ放し。開放的。
こりゃ外とほとんど変わらない。
そういや暑いほうが好きな私は寒い国を訪れる機会はほとんどなかった。
そっか。
寒いところでは着られるだけ着ればいい。
巻けるだけ巻けばいい。
たとえどんなにモコモコでも。